100 人と 100 人の 2 つの群れを並べた絵(有効率の数字の考え方)

インフルエンザの予防接種は、どのくらい効くのか? 「有効率60%」の数字の読み方

価格なび編集部公開日:更新日:資料を確かめた日:

「予防接種の有効率は60%」と聞くと、「打った人の6割は、かからない」と受け取りたくなります。編集部で厚生労働省とJIHS(国立健康危機管理研究機構、旧 国立感染症研究所)の資料を読んでみて、この数字はそう読む数字ではないと分かりました。

この記事は、医療の助言ではありません。打つかどうかは、かかりつけの医師に相談してください。ここでは、「有効率」という数字を、何を測った、誰の数字なのかという条件から読みます。空気清浄機の特集(関連特集:インフルエンザの季節の空気清浄機の選び方)で、「99%抑制」を試験の条件から読んだのと、同じ見方です。

1. 「有効率」は、何を測っているか

この章のポイント

有効率は「打った人の何%がかからないか」ではなく、打たなかった人と打った人の発病率の差を、割合にした数字です。

ノートにびっしりと書かれた、手書きの数字の列
有効率は、打たなかった人と打った人の発病率の差を、割合にした数字です(厚生労働省)。

厚生労働省のQ&Aは、有効性を次のように説明しています。ワクチンを接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準にして、接種した人のリスクが「相対的に」どれだけ減ったかという指標です。

同じ資料に、計算の例があります。

  • ワクチンを接種しなかった100人のうち30人が発病(発病率30%)
  • ワクチンを接種した200人のうち24人が発病(発病率12%)
  • 有効率=(30−12)÷30×100=60%

(接種した人の200人中24人を、100人あたりに直すと12人です。見比べやすいように、頭の絵は「100人あたり」で描いています。)

有効率の計算(色は 発病/発病していない)。①ワクチンを接種しなかった100人のうち30人が発病(発病率30%)。②ワクチンを接種した200人のうち24人が発病(発病率12%)。接種した人の200人中24人を、100人あたりに直すと12人です。③有効率=(30−12)÷30×100=60%

この例を読んで、編集部が最初に気づいたのは、打った人の発病率が12%(つまり88%は発病していない)だという点です。「60%」は、この88%でも「打った人の6割がかからない」でもありません。打たなかった人の発病率(30%)と、打った人の発病率(12%)の差を、30%に対する割合で表した数字です。

読者さん

有効率60%って、打った人の6割はかからない、ということですか?

編集部

違います。厚生労働省の例だと、打った人は200人中24人が発病していて、100人あたりなら12人です。60%は、打たなかった人の発病率(30%)と、打った人の発病率(12%)の差を、30%に対する割合で表した数字です。

読者さん

じゃあ、打った人の88%は発病していない、ということですか?

編集部

この例の中では、そうです。ただ、「有効率」と「発病しなかった割合」は別の数字なので、混ぜないで読みます。

何の数字か計算読み方
有効率 60%打たなかった人に比べて、発病のリスクが「相対的に」どれだけ減ったか(30%−12%)÷30%×100比べているのは、打たなかった人の発病率(30%)と、打った人の発病率(12%)の差
打った人で発病しなかった割合 88%この例の中で、打った人200人のうち、発病しなかった人の割合100%−12%この例の中の数字。「有効率」とは別の数字

厚生労働省は、もう一つ大事なことを書いています。体の中にウイルスが入る「感染」と、症状が出る「発病」は別で、現行のワクチンは、感染を完全に抑える働きはありません。発病を抑える効果は一定程度認められていますが、麻しんや風しんのワクチンのような高い発病予防効果は、期待できない、とあります。

2. 数字は、誰を対象にしたものか

この章のポイント

数字は、対象(年齢・施設か外来か)と年度で変わります。新しい公的な数字は見つかりませんでした。

誰を対象にした数字か。対象:65歳以上の高齢者福祉施設の入所者/研究の年度:平成11年度(1999年度)の研究。対象:6歳未満の小児/研究の年度:2015/16シーズン。対象:乳幼児/研究の年度:複数の報告。対象も、年度も、測ったものも違います。

「60%」は、いつも同じ集団の数字ではありません。厚生労働省のページに出てくる数字を、対象と年度つきで並べます。

並べて、勝ち負けをつけない

下の数字は、対象も、年度も、測ったものも違います。同じ「有効率」の名前でも、並べて「どちらが効く」と比べることはできません。

対象数字研究の年度
65歳以上の高齢者福祉施設の入所者発病の阻止 34〜55%、死亡の阻止 82%平成11年度(1999年度)の研究
6歳未満の小児発病防止の有効率 60%2015/16シーズン
乳幼児概ね20〜60%の発病防止効果(報告によって幅がある)複数の報告

JIHSの資料にも、数字があります。3歳未満の小児を対象に、test-negative design(検査で陰性だった人と比べる方法)で調べたものです。

シーズン1回接種2回接種
2018/1983%(95%信頼区間 33〜96%)42%(同 −13〜71%。統計学的に有意ではない)
2019/2073%(同 31〜89%)62%(同 25〜81%。統計学的に有意)

同じ「3歳未満」でも、シーズンによって数字が大きく違い、信頼区間は広いままです。2回接種のほうが数字が小さい年もあります。資料は、これを「2回接種で発病リスクは約1/2に低下すると考えられた」とまとめています。

読者さん

表の数字がバラバラなのは、どうしてですか?

編集部

対象が違うからです。施設の高齢者の数字と、6歳未満の小児の数字では、集団も、研究の年度も、測ったものも違います。同じ「有効率」でも、並べて勝ち負けをつける数字ではありません。

ここで、はっきり書いておくことがあります。厚生労働省のページに載っている数字は、古い年度の研究が多いです。2024/25シーズンの新しい有効率を、国の公的な資料で探しましたが、新しい公的な数字は見つかりませんでした(2026年10月22日に確かめました)。海外の研究の数字は、国や集団の条件が違うので、この記事では使いません。

3. 何を防ぐ数字か

この章のポイント

発病・重症化・死亡は別の数字です。数字を見るときは、誰が・何を・どのシーズンかを確かめます。

「発病」を防ぐ数字と、「重症化」や「死亡」を防ぐ数字は、別のものです。上の表の「死亡の阻止 82%」は、施設入所者の研究のものです。

厚生労働省は、こう書いています。現行のワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。ただし、発病の予防と、発病後の重症化や死亡の予防には、一定の効果があるとされています。ワクチンの効果は、発病の予防に加えて、重症化を予防することだ、とも書かれています。

数字を見るときは、次の3つを確かめてください。

  1. 誰が対象か(年齢・施設か外来か)
  2. 何を測ったか(発病・重症化・死亡)
  3. どのシーズンか(流行した型が違う)

4. 毎年打つ理由と、流行株

この章のポイント

毎年、そのシーズンに流行しそうなウイルスに合わせて、ワクチンが作られます。

青空の下で、霜で白くなった冬の木
毎年、そのシーズンに流行しそうなウイルスに合わせて、ワクチンが作られます(厚生労働省)。

インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行しそうだと判断されたウイルスで作られます。厚生労働省は、昨年打った人でも、今年のワクチンの接種を検討してください、としています。

現在使われているのは、A型2種類(H1N1とH3N2)とB型1種類(ビクトリア系統)を含む「3価ワクチン」です。

3価ワクチン:A型 H1N1・A型 H3N2・B型 ビクトリア系統

流行しているウイルスと、ワクチンの元のウイルスで、免疫への作用に違いが見られる場合もあります。そのような場合でも、人では一定程度の有効性が保たれることが、疫学的な研究で明らかになっている、と厚生労働省は説明しています。

5. 打つ時期・回数・対象・費用

この章のポイント

流行は例年12月〜3月。13歳未満は2回。費用は自治体で違い、金額はここには書きません。

大きな数字が並んだ暦の一部
流行は例年12月〜3月ごろ。流行を迎える前の接種が望ましいとされています(厚生労働省)。
内容(厚生労働省)
時期例年12月〜3月ごろに流行し、例年1月末〜3月上旬がピーク。流行状況に応じて、流行を迎える前の接種が望ましいとされています
回数13歳未満は2回接種。定期接種は1回
定期接種の対象65歳以上の方、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能に障害があり日常生活が極度に制限される方など。それ以外の方は、希望して打つ形
費用健康保険は使えず、原則として全額自己負担で、医療機関によって違う。定期接種の対象などの方は、市区町村が費用を一部負担しているところもある。金額は自治体ごとに違うので、この記事には書かない
インフルエンザの流行の時期(厚生労働省 Q&A)
9月10月11月12月1月2月3月4月
流行
ピーク
  • 流行:例年12月〜3月ごろ
  • ピーク:例年1月末〜3月上旬

6. 副反応と、打てない人

この章のポイント

副反応の多くは、通常2〜3日で消えます。打てない人・先に医師に相談する人がいます。

接種→接種後30分は医療機関で安静→接種した場所の赤み・はれ・痛み、発熱・頭痛・寒気・だるさ。通常2〜3日で消えます
出ること出る割合消えるまで
接種した場所の赤み・はれ・痛み接種を受けた人の10〜20%通常2〜3日
発熱・頭痛・寒気・だるさ5〜10%通常2〜3日
まれに、ショックやアナフィラキシー様症状(発疹・じんましん・かゆみ・呼吸困難など)まれ—

ショックやアナフィラキシー様症状に備えて、接種後30分は医療機関で安静にするよう案内されています。

接種できない方(主なもの)
  • 接種液の成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • 発熱している方
  • 重い急性の病気にかかっている方

詳しくは、接種する医療機関で相談してください。

先に医師に相談する方(主なもの)
  • 心臓・腎臓・肝臓・血液の病気などの基礎疾患がある方
  • けいれんの既往がある方
  • 鶏卵・鶏肉などにアレルギーのある方

詳しくは、接種する医療機関で相談してください。

7. 鼻から入れるワクチン

この章のポイント

2023年に承認された、2歳以上19歳未満の鼻に噴霧するタイプ。効果の数字は、条件が読めないので載せません。

承認日:2023年3月27日。対象:2歳以上19歳未満(0・2・19・20(歳)の物差し)

鼻に噴霧するタイプの弱毒生ワクチンが、2023年3月27日に薬として承認されています。対象は2歳以上19歳未満で、0.2mL(各鼻腔に0.1mL)を1回、噴霧する形です。厚生労働省のページでは、定期接種の対象(65歳以上など)には含まれません。

内容
承認日2023年3月27日
対象2歳以上19歳未満
量と回数0.2mL(各鼻腔に0.1mL)を1回噴霧
定期接種か定期接種の対象(65歳以上など)には含まれない(厚生労働省のページ)

このワクチンの「効果」の数字は、この記事では載せません。どんな人を対象に、何を測った数字かが、資料から読み取れなかったからです。条件が読めない数字は、載せないことにしました。

8. よくある質問

この章のポイント

よくある3つの疑問に、厚生労働省の文で答えます。

よくある質問

Q. 打てば、インフルエンザには絶対にかかりませんか?
いいえ。厚生労働省は、接種すれば絶対にかからない、というものではないと書いています。発病や重症化を、一定程度、抑える効果が期待されています。

Q. 去年打ったので、今年は打たなくていいですか?
流行しそうなウイルスに合わせて、毎年ワクチンが作られています。厚生労働省は、昨年打った人でも、今年の接種を検討するよう書いています。

Q. 「有効率60%」は、自分にも当てはまりますか?
当てはまるとは限りません。有効率は、研究の対象になった集団での、接種した人と、しなかった人の発病率の差です。自分の年齢や持病、そのシーズンの流行によって、数字の意味は変わります。

9. 打つかどうかは、かかりつけの医師と相談してください

この章のポイント

この記事は、医療の助言ではありません。打つかどうかは、かかりつけの医師に相談してください。

持病のある方・お子さん・高齢の方・妊娠中の方は、特に、かかりつけの医師に相談してください

この記事は、予防接種を勧めるものでも、止めるものでもありません。持病のある方、お子さん、高齢の方、妊娠中の方は、特に、かかりつけの医師に相談してください。費用や実施期間は、お住まいの市区町村にも確かめてください。

出典と確認日(2026年10月22日)

価格なび編集部